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2024/01/26 17:47

2022.07.28

 

庭のジギタリスが最近、種を付け始めました。ジギタリスの英名はFoxglove(フォックスグローブ)、その由来は妖精がキツネにジキタリスの花を手袋として贈ったというお伽話からだそう。春から夏にかけて草丈が1mを超えるので存在感がありつつ、どこか可憐で素朴な雰囲気もあって大好きな花です。


初めてその種を植えたのは一昨年の秋でした。ジギタリスは種を蒔いてから翌々年にやっと花を咲かせる2年草なので、やっと蕾をつけてくれた時の嬉しさは特別です。今年の春には草丈が私と同じくらいにもなり、とうとうアプリコットやピンク色の素敵な花を咲かせてくれたので、毎日何度も庭に出てはうっとりしていました。
 
ちょうど、1度目の花が咲き終わった頃に引越をすることになったので、枯れてしまわないかちょっと心配だったのですが、新しい庭でも次々と花を元気に咲かせてくれているのでホッとしています。
 
日陰や氷点下にも強く育てやすい植物で、植木鉢でも育てられるのでおすすめです!猛暑にも負けず、いまだ脇芽を出したり蕾を付けている逞しいジギタリスですが、咲き終わった花をそのままにしていたら、少しづつ鞘が出来て種を付けだしたので採ってみると、とても小さくまるで粉のようなので改めて驚きました。
 
少し前に秋に向けてコスモスや矢車草の種を蒔いたのですが、長細いものやコロコロとしたもの、綿毛に飛ばされるものなど、花と同じくらい種にも個性があって面白いなと思いました。


毎年、種を蒔いたり収穫するたびに、1ミリにも満たない小さな粒でも季節をしっかりと感知して芽を出し、短期間のうちにぐんぐん成長し、沢山の花や実を付けることを不思議に思います。
 
過酷な環境の砂漠で種が芽を出す仕組みなどは最新のコンピューターよりも高性能なのではと思ったり、また、縄文時代の遺跡やツタンカーメンのお墓から見つかったハスやエンドウの種が、2千~3千年間も休眠して、その後発芽して花を咲かせたという話は、まるで魔法のようでさえあります。
 
そんな種々に詰まっているもの。
それは、40億年近くをかけて進化してきた生物の歴史なのだなと思います。小さな粒に適度な温度と水分、そして光を与える事で、陸に上がるまで三十億年あまり、陸に上がって5億年の歴史を経て進化した植物の姿が作られていくのです。
 
そしてもし、その小さな粒がみな失われたとしたら、沢山の種類の植物達も背景にある長い歴史も永遠に失われてしまうのです。
 
庭で成長する植物達を眺めていると、そんな事に思いを伏せます。植物は一見静かで穏やかですが、実はその中に力強いエネルギーが満ちていて、私達生物達に大きな影響を与えています。そして私達が毎日頂いている食事や肌につけるものも、その逞しい生命力を頂いているのだと思うと、生命のエネルギーというものは循環しているのだなと思うのです。







カヒミ カリィ

ミュージシャン、文筆家、
フォトグラファー 。91年デビュー以降、
国内外問わず数々の作品を発表。
音楽活動の他、映画作品へのコメント執筆、
字幕監修、翻訳など幅広く活躍。これまで
カルチャー誌や文芸誌などで写真
執筆の連載多数。2012年よりアメリカ在住。

http://www.kahimi-karie.com
Instagram : @kahimikarie_official