2022.02.03
下道 千晶 モデル・俳優。
2015年に、房総半島へ移住。
自然に寄り添う暮らし方を実践中。
また、天然藍を使った染め直しの活動
「meets BLUE project」を始め、
活動を通して持続可能な
ライフスタイルを提案している。
あれは確か3年ほど前。
自由に海外旅行ができた頃。
義父・義母・私の3人で、冬のロンドンと
パリを旅した。
当時の私は、初めての育児、かつ、ほぼ
ワンオペ育児に煮詰まりきっていた。
しかも、今思うと何故そんなに自分を追い
込んでいたのかわからないのだけれど、
仕事・家事・育児の他には予定は入れては
いけないと思っていたし、休むこと、
自分のために時間を使うことには罪悪感
さえ感じていた。
たまに夫が気をきかせて私が一人になる
時間を作ってくれても、何故だか家を放り
出したような気分になり、純粋にその
時間を楽しめないといったありさま
だった。
そんな私をみかねたのだろう、義理の両親
がある日私を外の世界に引っ張り出して
くれた。
「千晶ちゃんは表現者でしょう。本物を
観にいきましょう」って。
行き先は、二人が仕事やプライベートで
何度も訪れているロンドンとパリ。
特に義父はフランスに恋している。
ロシア人である義父は、普段の生活に
必要な英語・日本語の他に、独学で
フランス語も習得してしまったほど。
二人はフランスのアヴィニヨンにアパルト
マンをもち、年に1回街全体が劇場になる
その街で休暇を楽しむことが多かった。
そんな二人からの突然のお誘いにびっくり
している間に、話はあれよあれよと進み、
私は気がついたら飛行機の中にいた。
こんなにポカンとした搭乗者は他に
いなかったんじゃないかなと思う。
未だ半信半疑な私を乗せた飛行機は無事
着陸。列車に乗って着いた冬のヨーロッ
パは、限りなく白に近いグレーだった。
何を持っていけば良いかわからず、
とにかく思いついた荷物をぎゅうぎゅう
に詰め込んできたカートの車輪が石畳の
溝にはまるたび、ここはもう日本では
ないと私に実感させるのだった。
旅の内容はというと、ほとんど義理の
両親にお任せで、日中は美術館やお城を
巡り、夜はオペラを鑑賞した。滞在中は
ロンドンでもパリでもほぼ毎日こんな
ふうなスケジュール。こうしてその時を
思い出しながら書いていている今、実は
あれは夢だったんじゃないかという
くらい、私にとっては贅沢な日々だった。

特にオペラ鑑賞は初めての経験。日本に
いると、とっても敷居が高いように
感じるオペラ。
「千晶さん、日本ではオペラは特別な人
だけが楽しむもののように感じるかもしれ
ないけれど、特にフランスでは普通の
サラリーマンたちが仕事終わりに観にくる
んだ。芸術は彼らにとって暮らしの一部
なんだよ。」と義父が教えてくれた。
なるほど、確かに私が想像していたオペラ
鑑賞は、特別リッチで教養のある方々が
豪華なドレスを着て鑑賞するものだ。
私なんかは場違いじゃないかと気がひけて
いた。けれど会場を見渡すと、私が想像
していたものよりも、ずいぶんリラックス
した雰囲気だった。
「この日のために!」と気合が入ったもの
というよりは、それぞれの日常の延長線上
として楽しんでいるようにみえた。
そして会場にいらっしゃる皆さんの
オシャレもさまざまだった。
特に素敵だと思ったのは、ミドル世代の
方々が、ハッとするような鮮やかな
カラーを着たり、大振りのネックレスや
ピアス、ちょっと大胆なカッティングの
ドレス、ミニスカートなどを、自分
らしく、遊び心をもって素敵に着こなして
いるのを目にしたとき。
そういえば街を歩いている時にも、冬の
ヨーロッパのグレーの街中を明るくする
フューシャピンクのカラーコートを着て
いらしたおばあちゃまを見かけて、
とっても素敵だと思ったっけ。

それにひきかえ、最近の私は「年相応」
という言葉を意識しすぎではなかった
かしら。
「年齢的にミニスカートを履くのは…」
とか「お母さんなんだから落ち着いた
格好をしなければ」とか。それって
実は、自分で自分にレッテルを貼る
行為だったのかもしれないと気がつく。
どこかで見かけた「妻」や「母」に、
「私」という個人を閉じ込めてしまって
いたのかも。妻であっても、母で
あっても、私は私をもっと楽しんで
よかったんじゃないかしら。
この旅行以来、ここまで特別なことは
出来なくとも、私は普段の暮らしの中で
自分を楽しませたり、ゆるめたり、
喜ばせることを許せるようになった。
例えばバスタイム。

普段は息子と一緒なので、全行程を一気に
わーっと。
自分に時間をかけることもできず、
とりあえず洗えていればいい、くらいの
もの。お風呂を出てからも戦いは続き、
ドライヤーも保湿も「とりあえず」。
なんとか寝かしつけまで持ち込んだもの
の、そのまま一緒に寝落ちしてしまう
こともしばしば(本当はほとんど)。
けれど今はたまに、お風呂から寝かしけ
までを全て夫にお願いして、バスタイム
で一人時間を楽しむこともある。
観ようと思っていた動画や、読みかけの
本を持ち込んで、時間を気にせず湯船で
ゆっくり過ごせるのは、今の私にとって
は特別な時間だ。
そんなときには、いつもよりちょっと
良いものを使いたくなる。
joscille skin&mind の石鹸は、私にとって
バスタイムの一人時間に欠かせない
アイテムのひとつ。
猫の形をしたこの石鹸は、なんといっても
香りが最高なのだ。
特別なのは香りだけでなく、使用している
素材にも。オーガニック植物成分をはじめ
として、なんと99%以上がナチュラルな
成分でできているそうだ。石鹸というと、
ふだんは洗浄力の強いものを想像して
しまいがちだけれど、joscille skin&mind の
石鹸は大人のゆらぎ肌でもつっぱらず、
とことん優しいのだ。
泡立ちもよく、弾力のあるモチモチとした
泡で肌を摩擦レスに洗えるのも嬉しい。
深く深呼吸したくなるような植物の生命力
みなぎる香りと、優しくリッチな泡に
包まれて、毎日頑張って気づかないうちに
固くなっていた心と身体がほぐれていき、
自然といつもより丁寧に自分をケアしたい
と思える。
こんなふうに、自分自身に戻れるささやか
な時間を積み重ねて、私は私を取り戻す
練習をしている。そして、ついつい自分の
気持ちを置いてけぼりにして
「〇〇するべき」でいっぱいになりそう
になったときには、あの旅のミニスカート
やピンクのコートを思い出す。
まっさらな私だったら今日は何を着る
かしら、と。
あわただしく暮らす日々のなかで、私た
ちは手放し上手になり過ぎていたかもしれ
ない。みんな、自分を諦めなくてもいい。
「家族の幸せ」には「私の幸せ」も含めて
よいのだ。