2023.10.09
皆さん、お元気でお過ごしですか?今年も茹だ
るような猛暑続きの夏でしたが、やっと暑さも
和いで秋らしくなってきましたね。こちらラン
カスターは、昼間はまだ暑くなる事があるもの
の、朝夕は10度前後まで下がる日が増えてき
ました。気付けば日も短くなってきて、平日は
朝6時に起床するのですが窓の外はまだ真っ暗
です。部屋の電気をつけて、起きた気がしない
なぁと思いながら寝ぼけ眼で娘のお弁当を作
り、そろそろ家を出る7時過ぎになってやっと
明るくなってきます。
久し振りに好きなセ-タ-を取り出して庭に出
ると、朝焼けで空はピンク色に染まり、冷たい
空気は新鮮で心地良く、シャキッと一気に目が
覚めます。
夏の終わりはいつも名残惜しいのですが、秋の
朝は気持ちをリセットさせてくれて良いものだ
なぁと感じる今日この頃です。
春からずっと私達を楽しませてくれた庭の草花
も、秋風に揺られながらぽろぽろと種を地面に
こぼすようになりました。じっと目を凝らして
観察すると、種だけでなくそれを覆っている殻
なども繊細で形態が様々なことに驚きます。ハ
ナアオイの種はまるで小さなカタツムリ、殻は
シイタケの裏側のようです。矢車菊の種はちっ
ちゃな化粧用の筆?ポピーやキツネノテブクロ
の種などはクシャミをしたら飛んでいってしま
いそうなくらい小さいのですが、でもよく目を
凝らすとやはり形や色に違いがあるのが分かり
ます。雪の結晶などと同じように、普段私達が
気付かずにいるけれども、実は美しいものが私
達の身の回りには沢山あるという事にまた気付
かされました。
大都会から田舎へ移り、自然が豊かな環境で生
活をするようになったことで、植物だけでなく
動物や昆虫などもより身近に感じるようになり
ました。庭付きの一軒家なので、虫達とは同居
しているようなものです。鳥の種類も多く、コ
ンコンコンと音をたてて樹を突くキツツキや、
ヘリコプターのように宙で止まったり、後ろ向
きでも飛べるハミングバ-ド(ハチドリ)を初め
て庭で見た時は嬉しくて思わず舞い上がりまし
た。グラウンドホッグやアライグマ、オッポサ
ムなどは、今でも見かける度につい息を止めて
ジ-ッと見つめてしまいます。

そしてその分、彼らの死を見かける事も以前よ
りとても多くなりました。アメリカの田舎だか
らか外で鳥や動物の死骸を見かけても片付けら
れずに、道や空き地の片隅にずっと残っている
事が多いのです。東京やNYではあり得ない事
だったので、これはけっこうカルチャーショッ
クでした。ある朝、散歩道でオポッサム(ネズ
ミとアナグマを足したような見た目でサイズは
大きめの猫くらいでしょうか)の死骸を見つけ
た時は思わず驚きギャッと飛び上がってしまい
ました。それから毎日、目を伏せて少し避ける
ように歩いていましたが、怖いという気持ちと
同時に風化していく様子は興味深くもありまし
た。視野の片隅からでも段々と形を変えていく
のは分かります。雨に打たれ風に吹かれ、少し
ずつ自然に風化していきそして3ヶ月ほど経っ
てやっと宙へと消えて行きました。その後も、
猫や鳥の死骸を同じように見かけることが時々
あります。出来れば避けたい経験なのですが、
でも考えてみると実は意外にも自分にとって貴
重な良い体験になっているのかもしれないと、
最近思うようになりました。否応なしだという
事もありそれはショック療法のようなのかもし
れません。振り返ってみるとそれは〝死を見
た〟というよりも〝命を見た〟という印象に代
わってきているように感じるからです。
実は、今年はこれまでの私の人生の中で一番、
大切な方々とお別れをしなくてはいけない事が
多く、悲しく心が揺れる事が多い一年でした。
今まで感じた事のなかったような想いが重なる
ことが多いからか、空を見上げるとふと気持ち
が遠くへ滲んでいくようで、朝夕関係なくつい
時間を忘れてしまいそうになります。命には限
りがあるのは当たり前だと分かっているのに、
いつまで経っても慣れず、いつも初めての事の
ようでとても戸惑いました。特に父親との別れ
は自分にとってやはり特別なものでした。父は
90歳を越え、また長い間闘病していたという
事もあり心の準備は出来ていたつもりでした
が、その日が来ると想像以上に冷静な自分がい
ると同時に、もの凄くたくさんの感情の海にザ
ブンと放り出されたような感覚に圧倒されてし
まいました。けれどもこの数年、自然豊かな環
境に身を置いて動植物の逞しさや儚さ、美しさ
に触れながら沢山の命を見れた事が、大きな助
けと慰めになっているように感じています。
今年、87歳で亡くなったムツゴロウさんは晩
年「動物と一緒で自然にかえるだけ」とおっし
ゃっていたそうですが、私の大切な方々はこの
自然美しさの一部に還っていったのだと思う
と、ス-ッと寂しさが消えて、自分もその温か
い自然の中に包まれているような気持ちになり
ました。

もう少しするとまた寒い冬がやってきます。地
面に溢れ落ちた種達は、春になったらまたたく
さんの芽を出してくれる事でしょう。それを楽
しみにしながら、この静かな秋の夜長をゆった
りと過ごしたいと思っています。