vol.8 
そろそろ
枯葉の下で冬支度
kahimi karie

2022.11.09

 

皆さん、お元気にしていらっしゃいますか?
  
ペンシルベニアはすっかり秋も深まり、朝夕は
息がうっすら白くなることも。日差しはまだ暖
かいけれど、じわじわと冬の気配を感じる今日
この頃です。
 
  
アメリカはこの季節になると、家々の玄関先に
ハロウィンの大きなカボチャやクリサンテマム
という可愛らしい小菊を飾る習慣があります。
街路は秋風に吹かれ飛んできた赤や黄色の枯葉
が何層にも重なり、まるで絨毯のよう。早朝に
こんもりと積もった枯葉の上を歩くとカサッカ
サッと乾いた音を立て、何ともクセになる心地
良さです。
 

 
今、我が家の庭ではコスモスや秋明菊、パンジ
ーなどの蕾がいっせいに膨らんで、ポンポンと
弾けるようにたくさんの花を咲かせています。
 
 
あと1ヶ月もしたら植物達も冬籠りに入るのか
なと思うと何だか少し名残惜しい気持ちです
が、本格的に庭仕事をするようになってから以
前よりも、枯葉が降り積もるガランとした景色
も静かで良いものだなと感じるようになりまし
た。
 

 
地面にこんもりと積もった枯葉は、植物達にと
っては寒さや霜から守ってくれるフカフカの布
団のようなものでもあるし、春になる頃にはゆ
っくりと分解されたそれが栄養となって、休眠
していた根々や新芽に元気を与えてくれます。
 
 
季節と共に移り変わる庭の様子を毎日観察して
いると、枯れた草花や時には腐ってしまった果
実でさえ自然の中では無駄でなく、全てが良い
具合に循環していて、それぞれに大切な役割が
あるということを実感できて、なんだかホッと
した穏やかな気持ちになれるのです。
 
 
話は少し変わりますが、先日そんな風にして庭
を眺めていた時に、自分が幼い頃、初めて植物
に興味を持った時の事をふと思い出しました。
 
 
小学生の頃に定期購読していた子供向けの教育
雑誌で、トマトがたわわに実った苗の根元にジ
ャガイモがぶら下がっている不思議な写真を見
つけたのです。同じ種類のものならともかく、
こんな事が可能なのかと驚きました。植物が好
きな外科医の父にその事を話すと「人間じゃこ
んなに簡単にはいかないねぇ」と笑いながら、
接木や摘心、切り戻しなど、庭仕事をする時に
必要な事柄を簡単に教えてくれました。父は食
べ終わった果物の種を庭に蒔いて上手く成長さ
せたりしていた事があったのですが、私が一人
暮らしをするようになってオレンジの種などで
試してみると思っていたよりも難しく、立派に
育てるには色々なコツがあるのだという事が分
かってきました。昔はインターネットがなかっ
たので、何かに興味を持ったら本屋や図書館な
どに行って探さなくてはいけなくて苦戦ばかり
で、仕方なく知識もないまま種を蒔いたり苗を
買って挑戦しては枯らしてばかりいたなぁと懐
かしく思います。
 
 
 
それから何度も引越を重ねましたが、いつも窓
際や狭いベランダでも何かしら育てていくうち
に、少しずつ上手に育てられるようになってき
ました。昔、父が教えてくれた接木や摘心、切
り戻しなどは、植物が蓄えているエネルギーを
理解して、それを枝や葉、花などに上手に促す
方法なのだと分かってきました。失敗しても上
手くいっても植物を育てていると感じるのは、
同じ種でもちょっとした日当たりや土の質、水
の与え方などで成長が随分変わること、そして
良い環境でスクスクと育った植物はエネルギー
も強くなり、自然に良い循環を促しているんだ
なという事です。
  

 
私達は植物とは違いますが、やはり身体にエネ
ルギーを蓄えているのは共通しているので考え
させられることも多く、庭仕事をするようにな
ってから自分のいる環境や日々の生活も見直す
事が増えました。
  
  

植物ほどわかりやすくないかもしれませんが、
私達も太陽や空気、水、風などから想像以上に
影響を受けていて、そして食事からは植物や動
物など生命のエネルギーを直接貰っているのだ
なぁと思います。Joscilleで紹介されている
ものは、その素晴らしい植物や環境のチカラが
ギュッと包まれているようで大好きです。これ
からどんどん寒くなり空気も乾燥していきます
が、身体や心を労わりながら、毎日元気に過ご
したいですね!
 





 

カヒミ カリィ

ミュージシャン、文筆家、
フォトグラファー 。91年デビュー以降、
国内外問わず数々の作品を発表。
音楽活動の他、映画作品へのコメント執筆、
字幕監修、翻訳など幅広く活躍。これまで
カルチャー誌や文芸誌などで写真
執筆の連載多数。2012年よりアメリカ在住。

http://www.kahimi-karie.com
Instagram : @kahimikarie_official
Liquid error (sections/article line 62): internal